恥知らずな大人は救えない

ウチの塾には、発達障害のある小学生の女の子がいる。といっても、あたしから見れば、その障害の度合いはかなり軽度に見えるのだけれど。

あたしが勤め始める以前の彼女は、塾でもそのほかでも、色々問題を起こしていたらしい。具体的な話は控えるけれど。

そういった障害のある子というのは、中学にあがるときに、教育委員会の審査を通過しなければ、いわゆる「普通学級」への進学ができない。

先日、その子のそういった運命のかかった審査があり、彼女は見事、それをパスできた。発達障害のある子に特有の、「集中力の欠如」という問題も、学習能力も、彼女の場合は、いわゆる「健常者」と同等のレベルにまで達していたから。

そこまでには、彼女自身、そしてそのご両親も、さまざまな苦労があっただろう。恥ずかしさ、疎外感、苛立ち、将来への不安。それを思うと、私は他人事とは思えない。私自身が、そういった辛酸を舐めてきた身だから。

彼女の未来を思う。これから、もっと色んな苦難があり、挫折や絶望を何度でも味わうことにもなると思う。でも、そうだとしても、人は大丈夫、しっかり生きていける、ということを、伝えられる人間でいたい。

ウチの塾は、今はウナギのぼり的に生徒が増えている。そのことに気分の良いウチのオーナーが、この前、こんなことを言い放った。

「この調子なら、〜さんが普通学級に進学できなかったとしても、ウチには特に問題ないですよ」

人として下品なところがあるなぁとは、前々から思ってはいたけれどね。

あたしは何も言わなかった。
ただ、人としてこうはなりたくないなぁと、つくづく思った。