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東京の優しさ

今週のあたしは休みなし。次の休みは来週の火曜日。8日連勤は別に良いけど、変な疲れを残すと、免疫落ちて今流行りのマイコはんに取り憑かれるからさっさと帰ろう、と思って「帰りまーす」と颯爽と帰って来た。いつもより1時間ほど早いご帰宅。

 

その帰りの電車の中、目の前の座席に座っていた、同い年くらいの若い女の人。ずっと俯いていて、酔ってるっぽかった。あたしはさして気にもとめずに文庫本を読みふけっていたけれど、急にピシャピシャピシャーーーーって液体が床に零れ落ちる音がして、ビックリして目を上げた。

 

その人が吐いてた。

 

意識はあって、口を手で必死に抑えていたけれど、吐瀉物は虚しく落ちていく。両隣に男の人が座っていて、片方は同じく酔っ払っていて眠りこけていたけど、もう片側の人は、しっかりと起きていて、当たり前だけど状況も分かっている様子だった。

 

そこで席を離れるのが、普通のありがちな光景。そうなるかなと思っていたけれど。

 

その人は動かなかった。

実際その人の靴にも吐瀉物がちょっとかかっていたけれど、その人はそれを気にしないようにしていた。じっとその女の人の隣に座っていた。

 

だからと言って特に何かしてあげることはなかったけれど。でもそんなその人を見て、あたしは「優しいなぁ」と思った。そんな状況でも、遠ざけられれば悲しいものだ。それを敢えてしなかったその男の人の気持ちがなんだかぬくかった。

 

その男の人のそんな優しさを目の当たりにしたので、あたしも便乗して(?)その女の人に持ってたタオルをプレゼントした。髪や手に付いた汚れをまずは落とさないとね。女の人だしね。

 

東京の人の優しさは、控えめで静かなのだ。

分かりやすい明らさまな優しさを恥ずかしがる奥ゆかしさがある。勿論分かりやすい優しさも大事やけどね。でもそれをしないのは冷たいからじゃなくて、恥ずかしがりだからなんだ。