星に手を伸ばす子ら

子供と一口に言っても、彼らの成長は本当にそれぞれ全く違っていて、そばで見ていて本当におもしろい。

中学1年生にもなるのに、まだ駄々っ子のように大人に甘えきっている子もいれば、まだ年端もいかない小学生の子が、自分の人生の舵をしっかり握っていることもある。

人の人格は目に宿っているように思う。
目の強さ、輝きは、言葉以上にその人を物語っている。

私の担当するある小学生の女の子。目でしっかりと相手を捉えて、自分の意思をはっきりと伝えることができる。

これが出来る子というのは、実は案外少ない。大抵の子は、「良いか悪いか」「合ってるか間違ってるか」を気にして、「正解」を言おうとする。つまり、大人が求める答えを先回りして考えて、「問題のない子」だと思われようとする。

その子にもそういうところが全く無いわけではないのだけれど、少なくとも私の授業における彼女は、いっぱしの大人に近い目をしている。「私には私の意思や意見があり、それは尊重されるべきものである」という感覚が宿ったその目は、まっすぐにキラリと光って、とても綺麗。

そういった子達に勉強を教えるというのは、ある種の繊細さが必要になってくる。こちらの都合でものを考えて授業を押し進めていけば、それはたちまち見破られ、信頼を失うことになるから。

つい先日、その私の担当する女の子に、小6の終わりに習う「メートル法」を教えた。メートルやリットル、立方センチや平方センチを計算で単位変換する単元。慣れないとかなり厄介な単元である上に、中学に上がって以降はほぼ使うことのない内容。

やる意味はあるのかと言われれば、やる意味はある。この単元は厄介だけれど、ミリ、センチ、デシ、デカ、ヘクト、キロといった言葉の意味自体を知識として頭に入れておけば、対処ができる。「知っている知識を運用して、目の前の見慣れない問題を解決する力」を養うには、ちょうど良い。

ただ、問題を解きやすくするには、「それぞれの単位の関係性を全て暗記する」という方法もある。私はその方法でなく、前者のやり方で進めていくのが良いとは思ったものの、それには彼女の了承を取る必要があると感じた。どちらのやり方が良いかを、彼女に選んでもらおうと思った。

彼女は答えた。
「知ってる知識をフル活用して、問題を解けるようになりたい」

単純に暗記が苦手で嫌だと思っていることもあるのだろうけど(笑)ただそういった彼女の目には、強さを手に入れたいという欲望が燃えていた。

その後の彼女は、授業中、悩みながらも集中して問題に取り組めていた。その目からは、力を得ようと懸命に伸び上がる彼女の強い生命力が感じられて、私はそれに心から感動しつつ、指導をした。

全ての生徒にそうできたらと思うけれど、残念ながら、私は本来講師ではなく、この塾の運営と管理が本職で、少しずつそっちに仕事が回されているので、じきにその子との授業もなくなる。

あーーーーー、やだなぁーーー(笑)